「自分の会社は、いま売るといくらになるのか」

結論から言うと、決算書に一つの答えは載っていません。会社の価格は、将来生み出す利益・現金、保有資産と借入、事業のリスク、買い手との相性、取引条件で変わります。

同じ営業利益5,000万円の会社でも、社長が抜けると売上が半分になる会社と、管理職が運営できる会社では価値が違います。まずは「今いくらか」だけでなく、「何を直せば価値が上がるか」を見ることが大切です。

1. 将来どれだけ稼げるか

買い手が引き継ぐのは、過去の売上ではなく将来の事業です。営業利益やEBITDAなどを使い、平常時の収益力を見ます。

ただし決算書の利益をそのまま使うとは限りません。オーナー個人に近い経費、一時的な損失、過大・過少な役員報酬、売却後に不要となる費用などを整理し、通常の経営ならどれだけ利益が出るかを確認します。

2. 現金を生む力があるか

利益が出ていても、売掛金や在庫が増え続け、設備投資も大きければ、手元に現金が残りません。企業価値の基本は、将来生み出すフリーキャッシュフローです。

難しい計算をしなくても、税引後の営業利益に減価償却費を足し、運転資金の増加と設備投資を引くと、事業が生む現金のイメージを持てます。

3. 現預金・借入・不要資産はいくらか

事業そのものの価値と、株主が受け取る株式の価値は同じではありません。一般に、事業価値に余剰現預金などを加え、有利子負債を差し引いて株式価値を考えます。

事業価値に余剰現預金・事業外資産を加え、有利子負債を引いて株式価値を考える

また、遊休不動産、保険積立、投資有価証券、役員貸付金などの扱いによっても変わります。「会社の価値が3億円」と言われても、それが借入を引く前か後かを必ず確認してください。

4. 利益が続く確かさはあるか

次のような会社は、同じ利益でもリスクが高いと見られやすくなります。

  • 売上の半分を一社に依存している
  • 社長一人が営業・技術・許認可を握っている
  • 主要社員の離職で事業が止まる
  • 契約書や知的財産の整理が弱い
  • 粉飾、簿外債務、労務問題がある
  • 設備の更新投資を先送りしている

反対に、顧客が分散し、継続契約があり、管理職と業務手順が整っている会社は、利益の再現性を説明しやすくなります。

5. 誰が買うか、どんな条件か

価格は会社単独の数字だけでは決まりません。買い手が販売網、技術、人材、地域基盤に相乗効果を見いだせば、より高い評価になることがあります。

また、提示価格が同じでも、現金一括か分割か、社長が何年残るか、表明保証や退職金をどう扱うかで、実際に受け取る金額とリスクは変わります。

具体例:営業利益5,000万円の2社

A社は主要顧客が分散し、管理職が運営でき、毎年安定して現金を生みます。借入も少なく、設備更新も済んでいます。

B社は最大顧客が売上の60%を占め、営業は社長個人に依存しています。在庫の一部は長期滞留し、近く大型設備の更新も必要です。

利益は同じでも、買い手が将来受け取る現金と負うリスクが違うため、評価は大きく変わります。

自社で見るポイント

  1. 過去3〜5年の正常な営業利益・EBITDA
  2. 利益から実際に残る現金
  3. 現預金、借入、不要資産、簿外債務
  4. 顧客・仕入先・人材・社長への依存
  5. 今後必要な設備投資
  6. 株主構成、契約、許認可、労務の整理状況

よくある間違い

「売上の何倍」「利益の何倍」だけで決めることです。倍率は相場観の入口にはなりますが、利益の質や借入、将来投資を無視できません。

もう一つは、売却を決めてから準備することです。社長依存、滞留在庫、不明瞭な経費、株主整理は短期間では直せません。売らない選択を含め、数年前から整える方が経営の自由度は高まります。

次にやること

まず会社の「正常な利益」と「事業が生む現金」を整理し、借入・余剰資産を分けてください。そのうえで、買い手が不安に思う依存や未整備事項を洗い出します。

企業価値を考えることは、会社をすぐ売ることではありません。承継、資本提携、一部売却、継続保有を比べるために、今の立ち位置を知ることです。

よくある質問

純資産がそのまま会社の売値になりますか?

純資産は重要な参考ですが、そのまま価格になるとは限りません。帳簿に載っていない顧客基盤や技術が価値になる一方、在庫や不動産の実際の価値が帳簿を下回ることもあります。将来収益と資産の両面から見ます。

赤字会社でも売れることはありますか?

あります。技術、人材、許認可、顧客、地域基盤などを買い手が評価する場合や、一時的な赤字で改善可能な場合です。ただし、なぜ赤字なのか、買い手が引き継いだ後にどう改善できるかを説明できる必要があります。

いつから準備すべきですか?

具体的な売却予定がなくても、3〜5年程度の時間を持って整えると選択肢が増えます。利益改善、社長依存の解消、契約・株主・労務の整理には時間がかかるためです。準備した結果、売らずに承継する判断になっても無駄にはなりません。

御社の価値と、これからの選択肢を整理しませんか?

会社の価値は一つの倍率では決まりません。利益、現金、借入、設備、社長依存、承継意向をもとに、現在地と価値を高めるための論点を整理します。

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