「銀行は決算書のどこを見て融資を決めているのか」
答えは、特定の一行だけではありません。結論として銀行は、利益を出す力、返す力、財務の余裕、数字の中身、最近の変化を一つの物語として見ています。
社長がすべての財務指標を覚える必要はありません。ただし、次の7項目は自分の言葉で説明できるようにしておくと、銀行との対話が大きく変わります。

1. 売上と利益の推移
単年の黒字・赤字だけでなく、3期ほどの流れを見ます。売上が増えているのに利益率が下がっていれば、値下げ、原価上昇、固定費先行などの理由が必要です。
一時的な赤字でも、原因と改善策が明確なら説明できます。逆に黒字でも、利益が年々細っているなら注意されます。
2. 営業利益と経常利益
本業で利益が出ているか、金利などを払った後も利益が残るかを確認します。補助金や資産売却で最終利益だけが黒字になっている場合、本業の返済力とは分けて見られます。
3. 現預金
決算日時点の残高だけでなく、月中や季節変動も重要です。決算日に一時的な借入で残高が多く見えても、実態は資金繰り表で分かります。
4. 借入金と年間返済額
借入残高、月商との比率、短期・長期の内訳、年間元本返済額を見ます。借入が多くても返済原資が十分なら対応できますが、返済が利益と減価償却費を上回る状態が続けば、追加融資への依存が高まります。
5. 純資産
純資産は、これまで会社に蓄積した利益を含む財務の土台です。赤字で純資産が減り続けていないか、資本金より累積損失が大きくなっていないかを確認します。
ただし自己資本比率が高ければ何でも良いわけではありません。現金を使い果たして借入だけを減らせば、比率が改善しても資金繰りは弱くなることがあります。
6. 売掛金・在庫・貸付金などの中身
決算書の数字は、金額だけでなく回収可能性が重要です。長期間回収できない売掛金、売れない在庫、社長や関係会社への貸付金は、帳簿上は資産でも、返済に使える現金とは限りません。
銀行が明細を求めるのは、資産が本当に価値を持つかを確かめるためです。
7. 決算後の足元
融資判断の時点では、前期決算から何ヶ月も経っていることがあります。そこで直近試算表、受注、主要顧客の動き、資金繰り、今期着地見込みを確認します。
決算書が良くても、足元で急減速していれば説明が必要です。反対に前期が悪くても、月次で改善が見えれば前向きな材料になります。
銀行が知りたいのは「なぜ」と「これから」
たとえば粗利率が30%から26%に下がった会社があるとします。
「原材料が上がりました」だけでは不十分です。「主要材料が15%上がり粗利を4ポイント押し下げた。4月から価格改定し、現在の受注分では28%まで戻る。残りは仕入先変更で改善する」と説明できれば、数字と対策がつながります。
銀行員が社内で案件を説明できる材料を渡すことが、融資相談では大切です。
よくある間違い
- 決算書を税理士に任せ、社長が変化の理由を説明できない
- 良い数字だけを強調し、悪化要因を隠す
- 決算が出てから初めて銀行へ説明する
- 売上計画だけを示し、利益・運転資金・返済をつなげない
悪い数字そのものより、社長が把握していないことの方が不安材料になる場合があります。
次にやること
3期分の売上、営業利益、現預金、売掛金、在庫、借入金、純資産を横に並べ、増減の理由を一行ずつ書いてください。次に今期見込みと12ヶ月資金繰りを加えます。これが銀行説明の土台になります。
社長の説明は1枚にまとめる
銀行面談では、数字を大量に並べるより、前年差の大きい項目を絞る方が伝わります。「業績の現状」「増減の理由」「今後12ヶ月」「借入の目的と返済」の4枠をA4一枚にまとめ、詳細資料を添付します。税理士や経理に作成を任せても、説明は社長自身の言葉でできるようにします。
よくある質問
節税で利益を抑えると融資に不利ですか?
利益を抑えれば税負担は減りますが、返済力と自己資本の蓄積も小さく見えます。設備投資や成長資金を借りたい時期は、節税だけでなく、銀行へ示す収益力とのバランスを考える必要があります。
銀行へ試算表は毎月出すべきですか?
すべての会社が毎月提出する必要はありませんが、業績変動が大きい時期や大型調達の前は、月次で共有できる状態が望ましいです。数字が確定する速度も管理力の一部として伝わります。
悪い数字は先に伝えた方がよいですか?
重要な悪化は、原因と対応策を整理して早めに伝える方がよいでしょう。後から発覚すると、数字以上に信頼を損ねます。「何が起きたか」「資金にどう影響するか」「いつまでに何をするか」をセットにします。
銀行に伝わる数字の見せ方になっていますか?
決算書の良し悪しだけでなく、変化の理由と今後の見通しまで伝えることが重要です。直近の決算書・試算表・借入明細から、銀行が確認するポイントと説明材料を整理します。
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