「運転資金として、いくら用意すればよいのか」
結論は、月商だけでなく、代金を回収するまでの売掛金、販売まで保有する在庫、仕入先への支払いを待ってもらえる買掛金から計算します。
基本の式は次の通りです。
必要運転資金 = 売掛金 + 在庫 − 買掛金
これは、通常の商売を続けるために会社が立て替えているお金の目安です。
なぜ運転資金が必要になるのか
商品を仕入れ、在庫として持ち、販売し、代金を回収するまでには時間があります。一方、仕入先や社員への支払いは先に来ます。その時間差を埋めるのが運転資金です。
現金商売で在庫も少なく、顧客から先に代金を受け取る会社では必要額は小さくなります。製造業や卸売業のように、在庫を持ち、売掛で販売する会社では大きくなりやすいです。
具体例:必要運転資金は8,000万円
ある会社の残高が次の通りだとします。
- 売掛金:1億円
- 在庫:5,000万円
- 買掛金:7,000万円
計算すると、
1億円+5,000万円−7,000万円=8,000万円

少なくともこの8,000万円は、通常の商売の中で売掛金や在庫として固定されていると考えます。
ただし、決算日の一時点だけでは不足します。季節変動が大きい会社は、在庫や売掛金が最も増える月で計算してください。
売上が増えると必要額も増える
月商が1億円から1.2億円へ20%増え、回収・在庫・支払条件が変わらなければ、運転資金もおおむね増えます。
現在の必要運転資金が8,000万円なら、単純計算では約1,600万円の追加資金が必要です。さらに採用や設備投資が先行すれば、必要額はもっと増えます。
増収計画を作るときは、利益だけでなく運転資金の増加を資金計画に入れる必要があります。
金額と一緒に「日数」を見る
残高が増えた理由を理解するには、次の3つの日数が役立ちます。
- 売上代金を回収するまでの日数
- 在庫を持っている日数
- 仕入代金を支払うまでの日数
回収が10日遅れ、在庫日数が15日伸びれば、それだけ現金が長く寝ます。売上増加による自然な増加なのか、回収遅延や滞留在庫なのかを分けてください。

自社で見るポイント
- 月別の売掛金・在庫・買掛金を12ヶ月並べる
- 売上に対する各残高の比率や日数を見る
- 長期滞留の売掛金と在庫を分ける
- 今後の売上計画から追加運転資金を試算する
- 現預金と短期借入枠で不足月をカバーできるか確認する
式に入っている資産が本当に現金化できるかも重要です。回収不能な売掛金や売れない在庫は、通常の運転資金ではなく損失候補です。
よくある間違い
「運転資金は月商3ヶ月分」のように一律で決めることです。商流によって必要額は大きく変わります。
もう一つは、必要運転資金をすべて自己資金で賄おうとすることです。事業を続ける限り常時必要な部分は、安定した長期資金で支える考え方もあります。短期の季節増加分とは分けて設計します。
次にやること
直近12ヶ月の売掛金、在庫、買掛金を月別に集計し、必要運転資金の最大値を出してください。来期の増収分と季節ピークを足し、いつ、いくら不足するかを資金繰り表へ反映します。
運転資金は部門ごとに原因を持つ
全社合計だけでなく、得意先別の回収条件、商品別の在庫日数、仕入先別の支払条件まで分けると改善先が見えます。売掛金が大きい原因が特定の大口顧客なら契約交渉、在庫が大きい原因が一部商品なら発注方法の見直しというように、担当者が行動できる単位へ落とします。
また、決算対策で一時的に仕入や支払いを動かすと、期末残高だけでは実態を誤ります。月末平均や過去12ヶ月のピークを使い、繁忙期に必要な額を見落とさないでください。
よくある質問
人件費は運転資金の式に入らないのですか?
基本式は売掛金・在庫・買掛金で商取引の立替額を表します。しかし実際の資金繰りでは、給与、家賃、外注費、税金なども入金前に支払います。必要調達額を決めるときは、基本式に日々の支出と安全余力を加えてください。
買掛金を増やせば運転資金は減りますか?
計算上は減りますが、無理な支払延期は仕入先との関係や供給を傷つけます。契約条件の交渉として行い、単に期日を守らない方法は避けます。顧客から前受金を得る方法も検討できます。
短期借入と長期借入のどちらで賄うべきですか?
季節的に増減し、入金で戻る部分は短期資金と相性があります。事業を続ける限り常時必要な部分は、長期資金で安定させる考え方があります。会社の商流に返済時期を合わせることが重要です。
御社の商流では、いくらの運転資金が必要?
売掛金、在庫、買掛金を月別に見ると、通常必要な資金と季節的な不足を分けられます。増収計画まで含めて必要額を整理します。
60分無料|会社の手元資金チェック
